製品ライフサイクルとは?4つの段階とPLMシステム導入のメリット

製品ライフサイクル

製品のライフサイクルを正しく把握し、適切なデータ管理を行うことは企業の生産性を高める上で重要です。企業の維持や成長を図るためには、効率的な製品ライフサイクル管理(PLM)が重要な鍵となるでしょう。

まずは製品ライフサイクルとはどのようなものかを説明し、情報管理の効率化が求められる背景や、効率化に役立つ「PLMシステム」について詳しく解説します。

製品ライフサイクルとは

製品ライフサイクルとは、製品が生み出されてから使えなくなるまでの一連のプロセスを表した概念です。企業での企画と設計からはじまり、工場での製造、店舗での販売、顧客による使用、そして廃棄や再生といった過程が含まれます。

各過程で多くの人や物が関わるため、製品ライフサイクルにはさまざまなデータが付随します。製品ライフサイクルの管理では膨大なデータを扱うことになり、適切な管理が求められるのです。

製品ライフサイクルの情報を管理することは「PLM(Product Lifecycle Managemen)」と呼ばれます。PLMで製品ライフサイクルを一元管理し、効果的にデータを活用することは、企業の生産性や競争力を高めるために重要です。 

製品ライフサイクル情報管理の効率化が求められる背景

製品ライフサイクル情報管理の効率化を求められる背景には、近年の技術進歩や顧客ニーズの変化など、いくつかの要因があります。

膨大な関連情報

製品ライフサイクル上のデータは膨大です。部品をはじめ、さまざまな物のデータや顧客情報といった人に関するデータなど、全てのデータは適切に管理する必要があります。

データは、活用したい時に使いやすい形で管理されていなければ意味がありません。そのため、製品ライフサイクルの情報管理は効率化が求められるのです。

技術の進化

近年の技術の進化により、企業間の競争は激化し製品品質の基準が高まっています。また、デジタル社会の発展に伴い、スピード面でも求められるものが大きくなっているのを感じる方は多いでしょう。

製造業では、日々技術が進歩していく現代社会に対応しながら企業を維持するために、品質・コスト・納期を意味する「QCD」が重視されるようになりました。工数やコストを削減しながらも、スピーディーに高品質な製品を製造できるよう、業務体系からの見直しを図っている企業も少なくないようです。

業務体系の改善には、製品ライフサイクル全体を把握しなければならず、さまざまな部署やメンバーとの連携が必要になります。そのため、PLMシステムを導入し、製品ライフサイクルを効率的に管理する企業が増えているのです。

ニーズの多様化

ニーズの多様化が進み、販売や廃棄のタイミングが把握しにくくなったことも、製品ライフサイクルの効率的な管理が注目される理由のひとつです。他社との競争に負けないためには、顧客のニーズを正確に捉え、迅速に製造し、市場に導入しなければなりません。

製品ライフサイクル上で得られるさまざまなデータを有効活用して、ニーズやタイミングの把握に役立てていこうという動きが大きくなり、効率的な情報管理が求められているのです。

物価の高騰

物価や人件費が高騰している日本では、人件費の安い東南アジアの戦略に押され、国内の製造業ではコスト削減が大きな課題です。コストを抑えながらもより良い製品を作るため、製品ライフサイクルの情報管理を効率的に行い、品質向上やミスの防止を図る企業が増加しています。

製品ライフサイクルの効率を高めるPLMシステム

製造業では、いかに製品ライフサイクルを効率的に回すかが重要です。そのため、「PLMシステム」と呼ばれるITツールを導入する企業が増えています。

PLMシステムとは一体どのようなシステムなのでしょうか。製品ライフサイクルの管理に役立つPLMシステムについて詳しく解説します。

PLMシステムとは

PLMシステムとは、製品ライフサイクル全体を管理するITツールです。電機や自動車といった分野の産業では導入が進んでいましたが、近年はプロセス系製造業や消費財業でも注目されています。

設計や開発の部門では、CADを用いた設計の電子化など、自動化や効率化を進める企業が多い傾向がありました。しかし、製品ライフサイクルを高効率で回し、品質の高い製品を素早く市場へ提供するためには、製造や営業の部門まで含めて全社横断的に連携していく必要があります。そこで、PLMシステムを導入してデータ活用を効率化する企業が増えているのです。

管理できるものを具体的に挙げると、製品ポートフォリオや要件管理、CADや部品表(BOM)のデータ、取引先情報、製品情報やサービス部品に関するデータなどです。

PLMシステムを導入すると、製品ライフサイクル上のさまざまなデータを一元化できます。情報の管理や把握がしやすくなるため、QCDを向上させる取り組みも効率的に行えるようになるでしょう。データの横断的な活用も容易になり、開発力や企業競争力の向上も期待できます。

PLMとPDMの違い

PLMと似た用語にPDMがあるので混同しないように理解しておきましょう。

PDMは「Product Data Management」の略語です。製品情報管理システムを意味するもので、具体的にはCADや部品表などのデータを管理します。

PLMが製品ライフサイクル全体のデータを管理するのに対し、PDMは製品ライフサイクルのうち、設計・開発分野のドキュメントファイルを管理するものであるという点が、PLMとPDMの違いです。

PLMシステム導入のメリット

製品ライフサイクルを管理するためには、膨大なデータを取り扱う必要があります。しかし、部署ごとに情報管理が異なったり、データが散在していたりする状態では、せっかく得られたデータを効果的に活用できません。

PLMシステムを導入すれば、一元的に情報管理ができるようになり、効率化が図れます。
PLMシステム導入のメリットについて、詳しくみていきましょう。

正しい情報への素早いアクセス

製品ライフサイクルの情報を活用し、設計や開発などに役立てるためには、数あるデータの中から使いたい情報を的確にピックアップする必要があります。PLMシステムを導入することで、正しい情報に素早くアクセスできるようになるのは大きなメリットといえるでしょう。

また、PLMシステムを導入することにより、企画から廃棄までの工程について互いに関連付けた管理が可能になります。情報を一元的に扱えるため、必要なデータの迅速な共有や活用が実現し、作業効率の向上も期待できるでしょう。

リードタイムの短縮

製品を開発して製造する場合、企画や設計をする時点から、生産・販売・廃棄や再生までにかかる期間を見据えて管理しなければなりません。最大限の利益を得るためには、販売や廃棄の開始タイミングを見極めることが重要です。

PLMシステムを導入すれば、プロセスごとの情報整理がしやすくなり、タイミングの見極めが容易になります。

各プロセスにおける導入のメリットを紹介すると、まず、企画・設計・開発の段階では、工数を削減して販売までのリードタイムを短縮できます。状況を把握しやすくなり、製品を市場に投入するタイミングの見極めが適切に行えるようになるでしょう。

生産や販売の段階では、製品ライフサイクルについてリアルタイムで損益分岐点を把握できるようになります。廃棄や再生を行う判断をデータに基づいた形で行えるようになり、余計なロスを出したりタイミングを逃がしたりといったことを防げます。

サービス保守の段階でも、撤退するリスクの網羅やコントロールに役立てることができるでしょう。

PLMシステムの導入はどのプロセスにおいても効率化に役立ち、リードタイムの短縮につながるのです。
 

ミスの事前防止

情報共有の際に起こる伝達のミスや漏れは、大きなロスにつながることがあります。PLMシステムで情報共有の電子化や自動化が可能になれば、人為的なミスを防ぐことができるのです。

製品の品質向上

PLMシステムを導入し、開発や生産など各工程データを一元化すると、より良い製造を行うためのデータ共有がしやすくなります。伝達漏れによって起こるミスも減り、製品の品質向上や一貫性保持が期待できます。製品の品質を向上できることは、企業の利益につながる大きなメリットといえるでしょう。

PLMシステムによって製品ライフサイクルはどう変わる?

PLMシステムを導入すると、開発スピードがあがります。顧客のニーズに合った製品を迅速に市場に導入できるため、競争力が高まるでしょう。

情報管理が効率化され、必要な情報を手早く得ることができる職場環境では、社員の作業工数や労働時間も削減でき、コストの削減につながります。

また、製造に必要な情報や顧客のニーズを正確に管理できるようになれば、品質や顧客満足度も向上します。

PLMシステムの導入で製品ライフサイクルの管理を効率化することは、多くの面で企業の利益向上につながる効果が期待できるのです。

まとめ

製品ライフサイクルを効率的に管理することは、企業を維持し成長させていく上で重要です。多くのデータを扱う必要がある製品ライフサイクルの情報管理は、複雑なものになりがちですが、PLMシステムを導入することで簡単に一元的な情報管理が可能になります。

効率的に製品ライフサイクルの管理を行いたいと考えている企業の方は、ぜひ検討してみてください。


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