設計・製造ドキュメントの管理はどうすべき?文書管理システムを導入するメリット

ドキュメント管理

新たな製品を生み出す製造業の現場には、さまざまな文書が存在します。これらの文書は、単なる情報ではなく、企業が長年積み重ねてきた貴重な知的資産であるため、適切に管理することが必要です。

紙媒体でのやりとりが多い製造業ですが、近年のペーパーレス化に伴い、文書の管理方法を見直す企業が増加傾向にあります。文書管理の効率化を実現するため、文書管理システムの導入を検討している企業も多いでしょう。

この記事では、製造業における文書管理について解説します。文書管理システムを導入するメリットや文書管理の成功例についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

製造業における文書管理とは

製造業では、ひとつの製品を作るために、いくつもの部門が配置されています。製品を作り出す設計部や材料を調達する調達部、製品を販売する営業部などです。部門ごとに役割は異なるものの、それぞれが関連しあい、歯車のように機能することによって、ものづくりが行われています。

製造業には、大量の図面や技術関連の文書が存在し、それらは各部門をつなぐ重要な役目を果たしています。適切な文書管理なくして、製造業の成長は望めないといっても過言ではないほど、文書管理は重要な役割を担うものです。

個人文書と共有文書

製造業で管理する文書には、個人文書と共有文書があります。

個人文書は、その名の通り、個人が作成・管理・保管しているドキュメントを指します。たとえば、製造に関する作業工程を記したメモやノートなどです。

主に自身の業務を円滑に進めるために利用するため、机の引き出しなど個人のスペースで保管し、他の従業員と共有しません。

一方、共有文書とは、組織全体で共有するドキュメントを指します。部品の発注書や仕様書、品質検査記録表などです。そのほか、請求書や決裁書類、法定保存文書などのドキュメントも共有文書です。

共有文書は、必要とする従業員全員が見られるよう、共有フォルダなどで保存します。
 

製造業の技術資料

製造業に欠かせない文書のひとつに、技術文書があります。技術文書は、製品の適合性を立証するための文書で、製品の特性や機能がわかる技術資料で構成されているものです。

技術資料には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、製造業における主な技術資料について紹介します。

設計ドキュメント

設計ドキュメントとは、システム開発の概要や詳細など、設計についての情報を文書化したものです。量産体制に入る前の試験や解析データも含まれ、クライアントおよび自社のために作成します。

製造ドキュメント

製造ドキュメントとは、製造に関する情報を文書化したものです。製品の仕様をはじめ、手順や加工、材料リスト、安全に関する指示などが含まれます。製造ドキュメントは、製品製造のためのガイドラインでもあり、製品の一貫性を確保するために必要な情報です。

設備情報

設備情報とは、製造に関連する設備や機器についての情報です。製造ラインで使用している機械や工具のスペック、製造日、メーカー、保守スケジュールなどが含まれます。製品の品質確保や生産性の向上には、設備を正しく管理し、保守・保全することが必要不可欠です。

品質ドキュメント

品質ドキュメントとは、製品の品質を管理するための情報や手順を文書化したものです。製品の設計や製造、検査、評価など、品質保証に関連する情報が含まれます。品質に対する要件や規制を遵守しつつ、クライアントの要求を満たすために必要な情報です。

受注情報

受注情報とは、クライアントからの受注を正しく処理するために必要な情報です。製品の仕様や注文数量、納期、価格などが含まれます。受注情報は、製造スケジュールや品質管理、出荷など、各フェーズに影響を与えます。品質の一貫性はもちろん、納期の遵守や顧客満足度の向上には欠かすことのできない情報といえるでしょう。

文書管理の目的

企業にとって適切な文書管理を行うためには、文書管理の目的について正しく理解することが大切です。

文書管理に取り組む前に、まずは文書管理の目的を確認しておきましょう。

データの保管・蓄積

文書管理の目的として、まず挙げられるのがデータの保管・蓄積です。

企業が経営を続けていく限り、データはどんどん増え続けます。蓄積されたデータは、分析によって生産性向上や業務改善に活かすことができるものです。しかし、きちんと文書管理を行わなければ、単なる膨大なデータとなってしまい、分析することすら難しくなってしまいます。

必要なデータをすぐに取り出せる状態にする

ただデータを保管・蓄積するだけではなく、必要な時に必要なデータを取り出せる状態にすることも、文書管理の目的のひとつです。

適切な文書管理が行われていなければ、必要なデータがどこにあるかがわからず、検索に時間を要してしまいます。情報共有にも時間がかかり、その後の業務にも遅れが生じる可能性もあるでしょう。

データは、種類別や部署別などに分類し、きちんと整理することが重要です。そのためには、データを蓄積し続けるだけでなく、保管期限を過ぎた書類を正しく処分する必要もあります。

情報の属人化を防ぐ

適切な文書管理が行われていない企業では、全体で共有すべきデータであるにもかかわらず、作業担当者が個人で保管している場合があります。

その業務に関する手順や状況は、作業担当者しか把握していません。情報が属人化してしまうため、担当者不在で対応方法がわからなかったり、引き継ぎに時間がかかったりする可能性があるでしょう。

情報が属人化し、ナレッジが社内で共有されていなければ、担当者によって製品の品質に差が生じる可能性もあります。

紛失などのリスク管理

バラバラに管理された文書は、業務の遅延につながるだけでなく、紛失や情報漏洩の危険性もあります。企業には外部に流出させたくないデータが多くあるものです。

重要な情報が外部に漏れてしまった場合、企業としての信頼を失い、大きな利益損失につながりかねません。また国からの是正勧告を受けることになり、従わなかった場合には罰金が科せられます。重要なデータの紛失や情報漏洩といったリスク管理を行うことも、文書管理の目的といえるでしょう。

文書管理システム導入のメリット

文書管理システムとは、社内の文書を電子化し、作成から廃棄までコンピュータ上で一元管理するシステムです。システムを導入することによって、適切な文書管理ができ、社内ナレッジを有効活用することも可能となります。

とはいえ、文書管理システムの導入には時間とコストがかかるため、文書管理システムの必要性に疑問を抱いている方も少なくないでしょう。

ここでは、文書管理システムを導入することで得られる、具体的なメリットについて解説します。

保管場所の確保が不要になる

文書管理システムを導入すれば、コンピュータ上で文書管理を行うため、物理的な保管場所が不要となります。データが増えた場合も、ストレージを増やすだけで対応できるため、人的リソースも必要ありません。

情報が誰でもすぐに検索可能

文書管理システムでは、部門を横断して情報の一元管理を行うため、誰でも必要な情報を検索することが可能です。情報を探し回る必要がなく、スピーディーに情報を得ることができるため、生産性の向上も期待できるでしょう。

情報の共有がしやすい

文書管理システムは、文書の作成や保管、修正などをリアルタイムで共有することが可能となります。多言語に対応しているシステムなら、拠点が海外にある場合でもタイムラグなく、スムーズな共有ができ、業務全体の効率も大幅に上がるでしょう。

情報の更新がしやすく履歴も残る

文書管理システムでは、更新作業も容易となるため、常に最新データを共有できます。また、更新した履歴が自動的に残るため、万が一に備えたバックアップとしても有効です。

セキュリティ管理の強化

文書管理システムのセキュリティ機能を活用することで、アクセス権限の設定が可能となります。詳細なアクセス権限を設定して文書ごとに閲覧制限をかければ、情報漏洩や改ざんなどを未然に防ぐことができ、セキュリティ管理の強化につながります。

製造業の文書管理の成功事例

製造業の文書管理の見直しを検討しているものの、どのような取り組みを行えばよいかがわからない企業も少なくありません。

文書管理を適切に行うためには、PLM(Product Lifecycle Management)のハブとなる部品表を基軸に文書管理を行うことが鍵となります。設計、製造、資材管理など、製造業のあらゆる場面で活躍する部品表を基軸にすることで、数多くの文書を関連づけることが可能となるのです。

ここでは、製造業における文書管理の成功事例を紹介します。成功事例を参考にすることで、より効率的な文書管理が目指せるでしょう。

豊田鉃工様

愛知県豊田市に本社を置く、豊田鉃工株式会社は、自動車用の鋼板や樹脂部品などを生産するプレス部品メーカーです。

世界中の自動車産業を支える一方で、生産準備工程での情報伝達に手戻りが発生したり、紙での伝達が8割を占めていたりなど、文書管理による業務効率化に課題を抱えていました。

これらの課題を解決し、生産プロセスを迅速化するために、PLMソリューションサービス『ものづくリンク』を導入して文書の管理方法の見直す取り組みを始めたのです。利用部門とワークショップを行い、全社的な業務フローを見直すとともに、現場の意見をシステム開発にも反映させました。

『ものづくリンク』で生産準備工程を一元管理し、業務のあらゆる場面で活躍する部品表を基軸に文書管理を行うことで、業務の効率化と全部門の連携強化を実現しています。将来の機能追加に備え、拡張性に余裕を持たせているため、今後もさらなる成長が期待できるでしょう。

まとめ

製造業で扱う文書の数々は、企業の成長や持続性を左右する重要な要素となるため、適切な文書管理を行いましょう。

文書管理システムを導入すれば、手間がかかっていた文書管理の手間を削減でき、データの保管や蓄積、共有などもスムーズに行えます。また、ペーパーレス化の促進も期待できるでしょう。
自社にあった文書管理システムを導入し、業務効率化を目指しましょう。

JSOLが提供するPLMソリューションサービス『ものづくリンク』は、設計・開発、生産準備といったものづくりの過程において各部門で発生する図面や部品表、材料表や生産工程表といったさまざまな情報を「部品表」に統合し、全社レベルで共有できるPLMソリューションサービスです。業務のペーパーレス化を推進し、業務の効率化やデータの検索性アップを実現します。

紙中心の文書管理の煩雑さ、非効率にお悩みなら、『ものづくリンク』にぜひご相談ください。